ハテナソン国際フォーラム2019開催報告(中編)
本フォーラムの2日目は、持続可能な開発目標(SDGs:エスディージーズ)を主テーマに、自分ごと化の学びを体験するワークショップ「ハテナソン〜アイデアソン」をメインファシリテータは佐藤、準ファシリテータは4名の京都産業大学在学生(現代社会学部1名、外国語学部1名、総合生命科学部2名)および1名の京都産業大学卒業生がそれぞれ担当しておこなった。タイムスケジュールならびに実施内容等は次のとおりである。
3月23日(金)10時~16時半(開場:9時半)、3階3−A教室
10:00 オープニング
ハテナソンとはなにかについて、その由来と意味について説明した。ハテナソンとは「“はてな(?)”とマラソンを組み合わせたオリジナルの造語です。あとで説明する質問づくり手法QFTを知ったことをキッカケにつくりました。一人一人の発想が尊重される民主的ルールのもとで行われる質問づくり、および質問づくりの学び場のことを意味します。類似の用語にアイデアソン、ハッカソンがあります。」(カッコ内は配布資料からの抜粋)。その上で、本ワークショップの目的「よりよい教え方・学び方を、みんなで探し分かち合う。」とゴール「SDGsハテナソン(ババ抜き+ABD+QFT)を体験する。アクションプランを作り、SDGsを自分ごと化する。参加者同士で仲間になる。」を共有した。
10:10 ウォーミングアップ
参加者同士の関係づくりのために、3〜4人を単位とするグループ内で自己紹介ワークをおこなった。自己紹介内容は、①今日どこから来たのか、②今日はどのような名前で呼ばれたいか(本名、ニックネームなど)、③普段の居場所(職場、学校、好きな場所など)はどこか、④いまある疑問や問い、の計4項目とした。
10:30 ババ抜きカードゲーム
SDGsを知識レベルではなく、体感的に、笑いながら学ぶことを狙いとするカードゲーム(笑下村塾)を実施した。4〜5名グループ単位かつ所要時間15〜20分のカードゲームの前に、SDGsにまつわる3項目について、順次クイズ形式の問答などを交えながら情報共有した。すなわち、①SDGsとはなにか、②SDGsの17個のゴール関連する世界情勢にはどのようなものがあるか、③日本におけるSDGsの取り組みの進捗状況はどのようなものか、についてである。カードゲームはババ抜きルールと同様で、持ち札の中で同じ番号(1〜17のどれか)のものが2枚揃った時に場に捨てることができ、その時に場にあらかじめおいてある当該番号の札の裏面に書かれている指示を読み上げ、従う(指示にある行動をすぐさまとる)という流れで進めた。ゲーム終了後は、ゲームの中で出てきた指示(行動)の意味について振り返り、世界各地であるいは日本発のものとして、どのような取り組みがSDGsの推進に貢献しているのかを情報共有した。その後、カードゲームを共有したグループ単位で2つの異業種(鉄道×学習塾、中学×スーパー、病院×商店街のどれかを選択)を組み合わせての新事業創発ワークをおこなった。
12:00 今日の新聞(朝刊)を用いた超参加型読書会ワーク
読売新聞朝刊(読売新聞大阪本社から供与いただいた)を1人1部となるように配布し、あらかじめ運営側で選定しておいた7つの記事を提示した。カードゲームを共有したグループ内で1人1記事を担当してもらい、参加者全員が所要時間15分で次のタスク①〜②に取り組んだ。①記事にある内容をB5用紙数枚にまとめる(サマリーづくり)、②記事の内容とSDGsの17ゴールのどれかと関係付けたうえで2〜3分で説明できるように準備する。その後、各グループ単位で、一人持ち時間2分でのリレー式プレゼンテーションをおこない、担当記事内容などを共有した。(実際にはサマリーづくり完了までで午前の部を終了〜ランチ休憩とした)。本ワークは、2年前に竹ノ内壮太郎氏によって開発された超参加型読書メソッド「ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ®)」を参考に設計したものである。
12:50 ランチ休憩
14:00 問いづくり
アメリカで開発された質問づくりメソッドQFTを用いて、質問の焦点(質問を作るにあたってのテーマ)「SDGsの17の目標と169のターゲットは、経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである」のもとでの質問出し(3〜4人グループ内で4つのルールのもとで質問を出し合い、記録する)、質問と分類(出し合った質問を開いた質問あるいは閉じた質問のどちらであるかを検討する)と変換(閉じた質問を開いた質問に、開いた質問を閉じた質問に作り換える)、そして大事な質問(自分たちにとって掘り下げがいのある問い)の選定をおこなった。質問出しには12分間をかけ、作業後に4つのルールが守れたかどうかについて振り返りの時間をもった。質問の変換と分類においては、開いた質問と閉じた質問のそれぞれの利点と弱点を検討してもらい、両者を文脈や目的に依存して使い分けることが重要であること、たった一つの質問から出発しても多くの質問が生み出せること、そうして問いの本質あるいは核心に迫ることができるのではないかということを共有した。大事な質問を選定するにあたっては、13あるグループの質問出しシートを回覧させて、参加者が全質問リストを検討する時間をとった。各グループの大事な質問が揃った時点で休憩時間を兼ねたギャラリーウォークをおこない、気になる/掘り下げたい問いに印をつけてもらった。
15:30 休憩+ギャラリーウォーク
15:40 アイデアソン
ギャラリーウォークで印が多く付けられていた4つの問いを掘り下げ、具体的な行動計画を立てるアイデアソンを行った。個人単位で4つの問いのうち1つを選び、その問いに対する仮の答え(仮説)、問いの解決または仮説の検証のために必要な情報、その情報を入手するために必要となる行動の3項目について。個人ワークによる洗い出し(素材を出すワーク)をおこなった。その後、QFTワークを共にしたグループ内で洗い出したものの共有と意見交換、そして同じ問いを選んだもの同士による共有と意見交換を順次おこなった。次に個人ワークで自ら、あるいは自らを含むチームが取り組むタスク(必要な情報と行動の組み合わせ)の絞り込みと、コミットメント文「わたしは・・・をします」の作成をおこなった。最後は2〜3グループで起立の上で輪を作り、一人ひとりが自身のコミットメントを発表した。
17:25 クロージング
ワークショップ全般を観察および参加したLuz Santana氏およびHarry Stokhof氏がそれぞれに「日本における問いづくりの現場に学習者として参加できたことは想定以上の素晴らしさであった」「SDGsをテーマとする学びに参加者ととても活発に楽しそうに取り組んでいることに感銘を受けた」といったコメントを発した。最後に佐藤から参加者全員に謝意を表し、集合写真を撮影後、18:10に2日目を終了した。