ハテナソン hatenathon

こんにちは、当ブログ作成者のサトーケニチこと佐藤賢一です。ハテナソンは、一人一人の発想が尊重され、かつ民主的なルールのもとで質問をつくる取り組み、ワークショップなどのことを意味する造語です。人と人とがむすびつき、あらゆる場での学びがより豊かになること、そして人生がより豊かになることがハテナソンをおこなう目的です。このブログはさまざまな場で行っているハテナソンの方法や内容を記録し、好奇心・関心のあるひとの間で共有・情報交換することができればという願いをもち開設しました。よろしくお願いいたします!

ハテナソン国際フォーラム2019開催報告(中編)

f:id:kksateau:20190404153540j:plain


本フォーラムの2日目は、持続可能な開発目標(SDGsエスディージーズ)を主テーマに、自分ごと化の学びを体験するワークショップ「ハテナソン〜アイデアソン」をメインファシリテータは佐藤、準ファシリテータは4名の京都産業大学在学生(現代社会学部1名、外国語学部1名、総合生命科学部2名)および1名の京都産業大学卒業生がそれぞれ担当しておこなった。タイムスケジュールならびに実施内容等は次のとおりである。

3月23日(金)10時~16時半(開場:9時半)、3階3−A教室
10:00 オープニング
 ハテナソンとはなにかについて、その由来と意味について説明した。ハテナソンとは「“はてな(?)”とマラソンを組み合わせたオリジナルの造語です。あとで説明する質問づくり手法QFTを知ったことをキッカケにつくりました。一人一人の発想が尊重される民主的ルールのもとで行われる質問づくり、および質問づくりの学び場のことを意味します。類似の用語にアイデアソン、ハッカソンがあります。」(カッコ内は配布資料からの抜粋)。その上で、本ワークショップの目的「よりよい教え方・学び方を、みんなで探し分かち合う。」とゴール「SDGsハテナソン(ババ抜き+ABD+QFT)を体験する。アクションプランを作り、SDGsを自分ごと化する。参加者同士で仲間になる。」を共有した。

10:10 ウォーミングアップ
 参加者同士の関係づくりのために、3〜4人を単位とするグループ内で自己紹介ワークをおこなった。自己紹介内容は、①今日どこから来たのか、②今日はどのような名前で呼ばれたいか(本名、ニックネームなど)、③普段の居場所(職場、学校、好きな場所など)はどこか、④いまある疑問や問い、の計4項目とした。

10:30 ババ抜きカードゲーム
 SDGsを知識レベルではなく、体感的に、笑いながら学ぶことを狙いとするカードゲーム(笑下村塾)を実施した。4〜5名グループ単位かつ所要時間15〜20分のカードゲームの前に、SDGsにまつわる3項目について、順次クイズ形式の問答などを交えながら情報共有した。すなわち、①SDGsとはなにか、②SDGsの17個のゴール関連する世界情勢にはどのようなものがあるか、③日本におけるSDGsの取り組みの進捗状況はどのようなものか、についてである。カードゲームはババ抜きルールと同様で、持ち札の中で同じ番号(1〜17のどれか)のものが2枚揃った時に場に捨てることができ、その時に場にあらかじめおいてある当該番号の札の裏面に書かれている指示を読み上げ、従う(指示にある行動をすぐさまとる)という流れで進めた。ゲーム終了後は、ゲームの中で出てきた指示(行動)の意味について振り返り、世界各地であるいは日本発のものとして、どのような取り組みがSDGsの推進に貢献しているのかを情報共有した。その後、カードゲームを共有したグループ単位で2つの異業種(鉄道×学習塾、中学×スーパー、病院×商店街のどれかを選択)を組み合わせての新事業創発ワークをおこなった。

12:00 今日の新聞(朝刊)を用いた超参加型読書会ワーク
 読売新聞朝刊(読売新聞大阪本社から供与いただいた)を1人1部となるように配布し、あらかじめ運営側で選定しておいた7つの記事を提示した。カードゲームを共有したグループ内で1人1記事を担当してもらい、参加者全員が所要時間15分で次のタスク①〜②に取り組んだ。①記事にある内容をB5用紙数枚にまとめる(サマリーづくり)、②記事の内容とSDGsの17ゴールのどれかと関係付けたうえで2〜3分で説明できるように準備する。その後、各グループ単位で、一人持ち時間2分でのリレー式プレゼンテーションをおこない、担当記事内容などを共有した。(実際にはサマリーづくり完了までで午前の部を終了〜ランチ休憩とした)。本ワークは、2年前に竹ノ内壮太郎氏によって開発された超参加型読書メソッド「ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ®)」を参考に設計したものである。

12:50 ランチ休憩
14:00 問いづくり
 アメリカで開発された質問づくりメソッドQFTを用いて、質問の焦点(質問を作るにあたってのテーマ)「SDGsの17の目標と169のターゲットは、経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである」のもとでの質問出し(3〜4人グループ内で4つのルールのもとで質問を出し合い、記録する)、質問と分類(出し合った質問を開いた質問あるいは閉じた質問のどちらであるかを検討する)と変換(閉じた質問を開いた質問に、開いた質問を閉じた質問に作り換える)、そして大事な質問(自分たちにとって掘り下げがいのある問い)の選定をおこなった。質問出しには12分間をかけ、作業後に4つのルールが守れたかどうかについて振り返りの時間をもった。質問の変換と分類においては、開いた質問と閉じた質問のそれぞれの利点と弱点を検討してもらい、両者を文脈や目的に依存して使い分けることが重要であること、たった一つの質問から出発しても多くの質問が生み出せること、そうして問いの本質あるいは核心に迫ることができるのではないかということを共有した。大事な質問を選定するにあたっては、13あるグループの質問出しシートを回覧させて、参加者が全質問リストを検討する時間をとった。各グループの大事な質問が揃った時点で休憩時間を兼ねたギャラリーウォークをおこない、気になる/掘り下げたい問いに印をつけてもらった。

f:id:kksateau:20190404155154j:plain


15:30 休憩+ギャラリーウォーク
15:40 アイデアソン
 ギャラリーウォークで印が多く付けられていた4つの問いを掘り下げ、具体的な行動計画を立てるアイデアソンを行った。個人単位で4つの問いのうち1つを選び、その問いに対する仮の答え(仮説)、問いの解決または仮説の検証のために必要な情報、その情報を入手するために必要となる行動の3項目について。個人ワークによる洗い出し(素材を出すワーク)をおこなった。その後、QFTワークを共にしたグループ内で洗い出したものの共有と意見交換、そして同じ問いを選んだもの同士による共有と意見交換を順次おこなった。次に個人ワークで自ら、あるいは自らを含むチームが取り組むタスク(必要な情報と行動の組み合わせ)の絞り込みと、コミットメント文「わたしは・・・をします」の作成をおこなった。最後は2〜3グループで起立の上で輪を作り、一人ひとりが自身のコミットメントを発表した。

17:25 クロージング
 ワークショップ全般を観察および参加したLuz Santana氏およびHarry Stokhof氏がそれぞれに「日本における問いづくりの現場に学習者として参加できたことは想定以上の素晴らしさであった」「SDGsをテーマとする学びに参加者ととても活発に楽しそうに取り組んでいることに感銘を受けた」といったコメントを発した。最後に佐藤から参加者全員に謝意を表し、集合写真を撮影後、18:10に2日目を終了した。

ハテナソン国際フォーラム2019開催報告(前編)

f:id:kksateau:20190404152711j:plain


 わたしたちは2019年3月22〜23日の二日間を会期とするハテナソン国際フォーラム2019(英語名称:International HATENATHON Forum 2019)(以下、本フォーラム)を、京都産業大学むすびわざ館にて開催した。本フォーラムは2019年4月の京都産業大学生命科学部の開設を記念することを目的に、同学部および京都産業大学の教育研究の特色の一つである質問を創る学び場ハテナソンを京都産業大学内外の多くの人に知ってもらい,体験してもらうことをゴールとして、企画したものである。主テーマを「問いをもつ学び、問いから始める学び」として、生命科学の学びはもとより、あらゆる学びの原点に自ら問うこと、そしてその問いを他者と分かち合うことが重要であることを登壇者と参加者が分かち合い、学びあう場となることを期待した。

 本フォーラムの1日目は、4人のゲスト講演者によるシンポジウムとパネルディスカッションをおこなった。講演題目とタイムスケジュール、ならびに講演内容等は次のとおりである。

3月22日(金)13時~17時半(開場:12時半)、2階ホール
13:00 開会の挨拶
 寺地 徹(京都産業大学総合生命科学部 学部長)
 ゲスト講演者への謝意を表すとともに、京都産業大学総合生命科学部がこの4月から生命科学部に生まれ変わり、先端生命科学科と産業生命科学科の2学科体制で新1年生を迎えること、そして生命科学部での学びにはハテナソンをはじめとするアクティブで主体的な学びがあることを紹介した。

13:05 趣旨説明と事務連絡
 佐藤 賢一(京都産業大学総合生命科学部)
 本フォーラムが2年前(2017年3月)に京都産業大学むすびわざ館で開催したダン・ロススタイン氏を迎えての、同氏が開発した質問づくりメソッドQFT(question formulation technique)ワークショップならびにトレーニング・プログラムの続編であること、そして今回は、QFTの共同開発者であるルース・サンタナ氏をアメリカから、質問駆動型学習の研究かつ実践者であるハリー・ストコフ氏をオランダから、高等教育を専門とするジャーナリストである松本美奈氏を東京から、細胞生物学研究者ならびに歌人として著名な本学の永田和宏氏をゲスト講演者に迎えてのシンポジウムを1日目に、持続可能な開発目標SDGsをテーマに「問いをもつ学び、問いから始める学び」を体験するワークショップを2日目におこなうものであることなどを説明した。

13:15 講演1
 Luz Santana 氏(The Right Question Institute, USA)『Question Formulation: the Fundamental Skill for a Thinking and Learning』(日本語の逐次通訳付き)
 幼年期から青年期にいたる学校での学びに「質問する」スキルの涵養が重要であること、しかしながら学校教育の現場で質問をするのはほとんどが教師であり、生徒が、学生が質問する機会そのものがないことを問題として提示した。その上で、質問づくりメソッドQFTを開発者の立場から、このメソッドがどのようなプロセスで構成されており、その活用により幼稚園から大学・大学院にいたる様々な教育現場での学びがどのような変化を遂げつつあるのかを紹介した。QFTの体験前後で、教師側から見ただけでなく、学習者の質問スキルの向上に対する自己効力感の向上が見られることを示す予備的な研究結果も紹介された。さらにはグーグル検索に象徴されるインターネット時代における「質問する」ことの意義や、時代を超えた「質問する」ことの意義、すなわち健全かつ堅牢なデモクラシーの体現あるいは実現にQFTの普及が貢献することを期待する旨が述べられた。

14:05 講演2
 Harry Stokhof 氏(HAN University, Netherland)『How to Guide Effective
Student Questioning? Design and Evaluation of a Principle-based Scenario for Teacher Guidance』(日本語の逐次通訳付き)
 学校教育での学びに問いが重要であることは明白である、しかしながら、教室の中で質問するのは圧倒的に教師の側であり、その状況を変える必要がある、このことがハリー氏が小学校教師をしていた時からもつ問題意識である。そして、大学院で学び、かつ教師教育に関わるようになった現在は、教師の発問から始まる学びと、生徒や学生がもつ問いを重ねる学びのコンセプトとして、質問駆動型学習を構想・研究し、実践していることが説明された。現在実践している質問駆動型学習のシナリオでは教師と生徒の学びを5つの段階で積み重ねていく。個々のステップの内容と時間のデザインは学びの設計者である教師にかなりの自由度があること、そしてすでに複数の学校・教員で実装試験が行われていることなども紹介された。最後には日本の学校を担う教師たちへの提案(質問駆動型学習シナリオの共有と最適化に向けた国際連携など)が示された。

15:10 講演3
 松本 美奈 氏(読売新聞東京本社)『脱・自己中 誰かの立場で質問する』
 松本氏は、読売新聞社で「大学の実力」の編纂に中心的に関わるなど、高等教育を専門とするジャーナリスト活動を展開してきた一方で、最近数年間は帝京大学上智大学など、大学教育の現場で授業を行う機会をもつようになってきている。その活動を通して実感することは、学生の中に社会に対する無関心が広がっているという危機感であるいうことが問題意識として提示された。自身が設計し運営している授業科目では、新聞をだれかの立場に立って読むことを起点として、質問を作り、その質問に答えるための諸活動をまとめた発表をすることをゴールとする学びを実践している。大学が問うて学ぶ場であり続けるためには、学生が「質問するのは嫌だ、しんどい、恥ずかしい、怖い」といった心持ちから、「質問するともっと質問したくなる、理解が進む、相手と仲間になれる、深く学べる」へシフトするよう、われわれ教育者が促せるようにならないといけない、という提言が示された。

15:00 休憩
15:40 講演4
 永田 和宏 氏(京都産業大学)『問う力ー問は答よりむずかしい』
 初等中等教育の学びは学習(学んで習得する)であり、大学における学びは学問(学んで、問いなおす)であることを示した。才能とは正しく答えられることよりも正しく問えること、問題解決能力と問題発掘・提示力を総合したものである。既成概念や「型」でものを見ない、当たり前を疑う態度が重要である、とした。その具体例として自身の経験、すなわち人体を構成する細胞の数についてのエピソード(前提を疑うことの重要性)や、歌人としての知り合いの作品(当たり前を問い直すことの難しさと大切さ)を紹介するなどして、なぜ本を読み、学問をするのか、なぜ問いを立てることが重要であるのかを説明した。また、日本においては、科学はスポーツのように文化として根付くレベルに達していないという考えが示された。

16:15 休憩

f:id:kksateau:20190404154754j:plain


16:20 パネルディスカッション
 全ゲスト講演者(4名)が再び登壇し、コーディネータ(佐藤)による司会進行のもと、パネルディスカッションをおこなった。コーディネータから提示された3つのお題(問い)に対して、ゲスト講演者が順番に答え、あるいは論考を披露した。また1つのお題ごとに聴衆からの質疑を受け付け、ゲスト講演者との対話形式によるディスカッションを合わせておこなった。3つのお題は以下のとおりである。
1)いま探求したい問いはどんな問いですか?なぜその問いを探求したいのですか?
2)これまで探求のしがいのあった問いはどんな問いですか?どのように探求したのですか?
3)どんな問いが好き、またはお気に入りですか?なぜ好き、またはお気に入りなのですか?

ゲスト講演者はそれぞれすべてのお題に回答し、またその内容も4者4様の興味深いものであった。質疑応答では、高校生参加者からの「スピーカーの皆さんはいつから質問をすることができるようになったのですか?」という問いに対して、「実は私は小さい頃から問うことが好きで、しかもそれを誰かに止められる経験も特にないまま、たぶんそのおかげで今やっている仕事にぴったりの自分に至っているように思う」といった返答が出てくるなど、ゲスト講演者と聴衆が終始楽しく、時には笑いながらのやりとりをもつことができた。

17:30 閉会の挨拶
 黒坂 光(京都産業大学総合生命科学部 教授)
 あらためてゲスト講演者への謝意を表すとともに、京都産業大学生命科学部の設立にかかる教育研究のますますの充実に向けた取り組みをこれから実行していくことを説明した。アクティブラーニングと対極にあるかのように位置付けられることの多い座学や個人としての学びの充実も今後は一層重要となること、その道標の一例として2つの図書「新しい学力」「最強の学び方」を紹介した。
 最後に佐藤から聴衆全体に本シンポジウムおよびパネルディスカッションへの参加に謝意を表し、17:40に1日目を閉会した。